合併契約書(1)の書き方〔雛形と例文〕

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合併契約書(1)【無料の雛形・書式・テンプレート】

合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合同することであって、企業の拡張、経営の合理化、競争の回避、市場の独占等の目的のために行われるのが通常です。このような目的は営業譲渡によっても達成することは可能ですが、営業譲渡の方法による場合には、譲渡会社は会社としてはそのまま存続し株主の地位もそのままの状態であるため、譲渡会社を消滅させたい場合には別途解散・清算の手続をとる必要があります。これに対し、吸収合併の方法によれば、被吸収会社は当然に解散し清算手続を要せすに消滅し、しかもその会社の株主は当然に吸収会社の株主になりますから、面倒な清算の手続を省略できる点でよりメリットがあります

合併契約書(1)のサンプル(見本)

合併契約書

  ○○株式会社(以下「甲」という)と××株式会社(以下「乙」という)とは、経営の合理化による経営基盤の強化および経営の多角化による国際競争力の増強を図るため、合併することとし、次のとおり合併契約を締結する。

第1条(合併の方法) 甲および乙は合併し、甲は存続し乙は解散する。

第2条(発行する株式の総数) 甲は合併により、その発行する株式の総数を○○○○○株増加し、その総数を○○○○○○株とする。

2 前項により増加する株式は、すべて普通株式とし、一株の発行価額は○○○円とする。

第3条(合併による定款の変更) 甲は合併によりその定款を次の通り変更する。

(1)定款第○条を、「第○条 当会社の商号は株式会社○○○○とする」と改める。

(2)定款第○条を、「第○条 当会社は次の事業を営むことができる

  • ① 石炭石油類、液化石油ガスその他の燃料類およびこれらの製品の輸出入および売買
  • ② 樹脂(合成樹脂を含む)、油脂およびこれらの原料ならびにこれらの製品の輸出入及び売買
  • ③ 土地建物の売買、仲介、賃貸および管理
  • ④ 情報の処理および提供ならびに通信回線の利用あっ旋に関する業務
  • ⑤ 前各号に付帯する事業」と改める。

(3)定款第○条を、「第○条 当会社は、本店を東京都○○区に置く」と改める。

(4)定款第○条を、「第○条 当会社が発行する株式の総数は○○万株とする」と改める。

第4条(合併に際する新株式の発行および割当) 甲は、合併に際して、普通株式○○○○○株を発行し、合併期日現在における乙の株主名簿に記載された株主に対して、その所有する乙の株式一株につき、甲の株式一株の割合をもって割当交付する。

第5条(合併により増加すべき資本金等) 甲が合併により増加すべき資本金、資本準備金、利益準備金、任意積立金その他の留保利益の額は、次のとおりとする。

  • (1)増加すべき資本金の額 ○○円
  • (2)資本準備金の額 ○○円
  • (3)利益準備金の額 ○○円
  • (4)任意積立金その他の留保利益の額○○円ただし、積立てるべき項目は、甲乙協議の上、決定する。

2 前項の資本準備金、利益準備金、任意積立金その他の留保利益の額は、甲乙協議の上、合併期日の乙の資産状態を考慮して変更することができる。

第6条(合併承認総会) 甲は平成○年○月○日に乙は平成○年○月○日にそれぞれ臨時株主総会を開催し、合併契約書承認決議その他合併に必要な事項についての決議を求める。ただし、合併手続の進行に応じ、必要があるときは甲乙協議の上、これを変更することができる。

第7条(合併期日) 合併期日は、平成○年○月○日とする。ただし、合併手続の進行に応じ、必要があるときは甲乙協議の上、これを変更することができる。

第8条(会社財産の承継) 乙は平成○年○月○日現在の貸借対照表その他同日現在の計算書を基礎とし、その資産および負債その他の権利義務を合併期日において甲に引き継ぐ。

2 乙は、平成○年○月○日から合併期日に至る間の資産および負債の変動につき、計算書を添付して、その内容を甲に明示する。

第9条(善管注意義務、報告・協議義務) 甲および乙は、合併契約締結後合併期日に至るまで、善良なる管理者の注意をもってそれぞれの業務を執行し、かつ一切の財産の管理・運営にあたるものとし、その間に生じる経営上の重要な事項に関しては、互いに事前に報告し、甲乙協議の上、決定、実行する。

第10条(合併前の利益処分) 甲および乙は、合併契約締結後合併期日までの間に終了する営業期の利益処分については従来の例にならって行ない、利益処分に関する議案の作成については、甲乙の協議によって行う。

第11条(株式の利益配当の起算日) 甲が第○条にもとづき発行する株式に対する利益配当については、合併期日を起算日として計算する。

第12条(合併交付金) 甲は、合併期日現在の乙の株主名簿に記載された株主に対して、その所有する乙の株式1株につき金○○円の合併交付金を、合併登記完了後遅滞なく支払う。なお、この金額は、合併期日における乙の資産、負債の状況に応じ、甲乙協議の上変更することができる。

第13条(従業員の承継) 乙の従業員は全員、合併後も甲の従業員として雇用する。

2 乙の従業員の退職金および勤続年数については従来の乙の基準に基づいて通算し、その他の事項については別途協議の上、決定する。

第14条(合併後の役員) 合併に伴い新たに甲の取締役および監査役となるべき者については、第6条の甲の合併承認総会において選任する。

2 前項により選任される取締役または監査役の任期の始期は合併期日とする。

第15条(退職慰労金) 甲は、乙の取締役または監査役のうち合併後引き続き甲の取締役または監査役に選任されない者がある場合は、その者に対する退職慰労金を合併報告総会の承認を得て支給する。

第16条(解除条件) 本契約は、第6条に規定する甲および乙の株主総会の承認が得られなかった場合、または法令に規定された関係官庁の承認を得られなかった場合には、効力を生じない。

第17条(契約内容の変更および解除) 本契約締結後合併期日までの間に、甲または乙の資産もしくは経営状態に重大な変動を生じたとき、及び甲または乙の資産もしくは経営状態に隠れたる瑕疵があることが判明した場合には、甲乙協議の上、合併条件を変更し、または本契約を解除することができる。

第18条(協議事項) 本契約に規定のない事項または本契約書の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議の上、これを決定する。

  本契約の成立を証するため、本契約書2通を作成し、甲乙それぞれ署名捺印の上、各1通ずっを保有する。

平成○年○月○日

東京都○○区○○町○丁目○番○号

甲 ○○株式会社

代表取締役 ○○○○ 印

東京都○○区○○町○丁目○番○号

乙 △△株式会社

代表取締役 △△△△ 印

合併契約書の記載事項

本書式は、二社間の吸収合併の場合の合併契約書です。商法第409条は、合併契約書の記載事項として、次のものを要求しています。

  1. 存続会社が合併により定款変更をする場合はその規定
  2. 存続会社が合併に際して発行する新株の総数、種類、および数ならびに合併によって消滅する会社の株主に対する新株の割当てに関する事項
  3. 存続会社の増加すべき資本の額および準備金に関する事項
  4. 合併によって消滅する会社の株主に支払うべき金額を定めたときはその規定
  5. 各会社の合併承認総会の期日
  6. 合併をなすべき時期
  7. 各会社が合併期日までに利益の配当等をなすときはその限度額
  8. 存続会社に合併に際して就職すべき取締役または監査役を定めたときはその規定

合併期日

諸般の事情に柔軟に対応できるようにするため、本書式のように「合併手続の進行に応じ、必要があるときは甲乙協議の上これを変更することができる」といった文言を入れます(第7条)。

相手方の資産の調査

合併により、存続会社は、消滅会社の全財産(預金などの積極財産のみならず、負債などの消極財産も)を当然に承継します。従って、消滅会社乙が多額の焦げ付き債権や負債をかかえているような場合には、甲は吸収合併によって莫大な損害を被ることになりますから、そのようなことがないように、相手方の財産状態については神経質なくらい慎重に検討しておくことが必要です。

合併にあたつての増資・減資

割当比率を1対1または切りのよい整数比にするため、合併に先立って一方または双方の当事会社が増減資を行うことがあります。この場合、そのことを合併契約書に記載するのが通常です。合併契約締結後は、増減資は、財産に大きな変動をもたらすため、合併契約書に規定がなければなしえないものと解されるからです。

合併交付金

合併に際して、消滅会社の株主に対して、存続会社が支払う一定額の金銭のことです。合併交付金の目的は、①消滅会社の最終の利益配当金の代わりとしてのもの、②合併比率調整のためのもの、③合併にともなって資本滅少を行なう場合の払戻し金の性格をもつもの、のうちのいずれかですが、合併契約書にはその目的まで記載する必要はなく、第12条のように一定の金額を交付することを記載すれば足ります。

退職慰労金

合併に際して取締役、監査役等の役員から退職者が出る場合、甲の役員については甲の慣行に従って慰労金が支払われますが、乙の役員が退職する場合には当然には甲の慣行によって慰労金の支払を受けることができません。そこで退職する乙の役員の利益を考慮して第15条のような規定が置かれる例もあります。

不良会社との合併防止

第17条は、第7条、第8条の規定とあいまって、不良会社と合併することを未然に防止するための規定です。合併の相手方の会社の資産状態に不安がある場合には、このような解除条項の他に、相互の代表取締役の個人保証条項を規定することも考えられます。

事前開示

各当事会社は、承認総会の2週間前から合併の日後6か月を経過する日まで、本店に、合併契約書、合併比率の理由を記載した書面、承認総会の前6か月内の日において作成した各会社の貸借対照表、最終の貸借対照表および損益計算書等を備え置く必要があります。