営業譲渡契約書の書き方〔雛形と例文〕

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営業譲渡契約書【無料の雛形・書式・テンプレート】

契約の方式についてとくに法律の定めはありません。従って、契約自由の原則から両当事者間で合意が成立すれば、それだけで契約は成立することになります。ただ、営業譲渡は企業にとって極めて重大な法律行為ですから、実際には必ず契約書が作成されます。契約書に記載しておくべき事項としては次のようなものがあげられます。

  1. 移転すべき営業財産の範囲および引き継ぎの時期
  2. 営業の対価および支払時期ならびに方法
  3. 営業所および商号の引き継ぎに関する事項
  4. 使用人の引き継ぎに関する事項
  5. 競業避止義務に関する事項
  6. 解約事由その他に関する事項

 

営業譲渡契約書のサンプル(見本)

営業譲渡契約書

  ○○株式会社(以下「甲」という)と××株式会社(以下「乙」という)は、甲の営業の一部を乙に譲渡することとし、次のとおり契約を締結する。

第1条(譲渡する営業の特定) 甲は、その経営する営業のうち○○製造その他の○○工事の請負に関する営業を、平成○年○月○日(以下「譲渡期日」という)をもって乙に対し譲渡し、乙はこれを譲り受ける。なお、譲渡期日は、当事者の合意により変更することができる。

第2条(譲渡物件) 甲は、前条にもとづき、譲渡期日において、甲の○○部門に属する資産および負債にかかる別紙「資産負債明細表」記載の物件ならびにこれらにかかる営業上の権利義務の一切(これらすべてを包含して「譲渡物件」という)を、乙に移転する。

第3条(引渡) 譲渡物件の引渡は、第1条の譲渡期日に行う。

第4条(譲渡価格) 第1条の譲渡価格は、譲渡期日における当該物件の帳簿価額により算定し、譲渡資産の総額から負債を控除した残額とする。ただし、この金額が金○○○○円を超えるときは、譲渡価格は金○○○○円とする。

第5条(支払方法) 乙は、第1条の譲渡期日において、前条の代金の全額を、甲の指定する銀行預金口座に送金して支払う。

第6条(個別財産の移転) 譲渡物件のうち、譲渡の対抗要件ないし効力要件として通知・登記・登録等の手続を要するものについては、譲渡期日後遅滞なく、甲乙協力して実行する。

2 前項の手続に要する費用は、全額乙の負担とする。

第7条(善管義務) 甲は、本契約締結後譲渡期日までの間、善良なる管理者の注意をもって業務執行及び財産の管理・運営にあたるものとし、乙の事前の承諾なくして、譲渡財産に重大な変更を生じる行為を行なうことはできない。

第8条(事情変更・解除) 本契約締結後、譲渡期日までの間に譲渡財産に重大な変更が生じた場合には、甲乙協議の上で譲渡条件を変更し、または本契約を解除することができる。

第9条(従業員の承継) 本件営業に従事している甲の従業員は、原則として乙に承継されるものとし、詳細は甲乙別途協議の上決定する。

第10条(営業譲渡承認総会) 甲および乙は、それぞれ平成○年○月○日までに株主総会を開催し、本契約承認の決議を求める。ただし、必要に応じ甲乙協議の上、これを変更することができる。

第11条(別途協議事項) 本契約に定めるものの他、営業譲渡に関し必要な事項は、本契約の本旨にもとづき、甲乙誠意をもって協議の上これを決定する。

  この契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲乙それぞれ署名捺印の上各1通を保有する。

平成○年○月○日

東京都○○区○○町○丁目○番○号

甲 ○○株式会社

代表取締役 ○○○○ 印

東京都○○区○○町○丁目○番○号

乙 △△株式会社

代表取締役 △△△△ 印

移転すべき営業財産の範囲の特定

譲渡の対象となる財産の範囲は明確に特定してお≪必要があります。そこで、別に「資産・負債一覧表」を作成し、契約書に添付するのがよいでしょう。

譲渡価格

営業譲渡においては、譲渡価格の決定は不可欠の要素であり、重大な関心事ですが、営業譲渡が時々刻々と変動する営業を対象とするものであり、しかも一連の手続に比較的長期間を要するため、契約時点で確定的に譲渡価格を決定することは難しいといえます。そこで、本書式第4条のように、譲渡価格を決定する際に当事者が準拠すべき基準を定めておく方法をとることが有効です。

個別財産の移転

営業譲渡の場合、合併とは異なり、営業譲渡契約だけでは個別財産は当然には移転しません。そこで個々の財産ないし法律関係(不動産、動産、有価証券、債権、債務、契約関係等)について移転手続を個別にとることが必要となります。また、対抗要件を備える際も、各財産・法律関係ごとに行う必要があります。

特別決議

株式会社が、その営業の全部または璽要な一部を他に譲渡し、または他の会社の営業全部を譲受ける場合には、株主総会の特別決議(商法第343条)を得ることが必要とされています(同法第245条第1項第1号及び第3号)。

届出義務等

独占禁止法上、一定の要件を満たす『他の会社の国内における営業の全部または重要部分の譲受』の場合には、あらかじめ公正取引委員会に届け出ることが必要とされ、かつ、届出受理の日から所定期間(原則として30日)が経過するまでは営業譲渡をしてはならないこととされています(独占禁止法第16条第1号、第15条)。