少額訴訟とは何か

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原則一回の期日で判決まで行く

後述する民事訴訟手続きは、一般に時間と費用のかかる手続きと言えます。
そのため、友人、知人への貸し借りなどの少額の債権を、裁判所を利用して回収することは事実上、躊躇せざるを得ない状態でした。

そこで、導入されたのが、少額訴訟制度なのです。
少額訴訟で扱われるのは、60万円以下の金銭の支払請求に限られています。
例えば、動産の引渡しを請求する訴えなどの場合には、この手続きは利用できません。

また、通常の民事訴訟では、審理手続きは複数回の口頭弁論の積み重ねのもとに行われ、判決が下されるまでに多くの日数がかかります。
これに対して少額訴訟では、原則として一回の期日で双方の言い分を聞いたり証拠調べをしたりして、直ちに判決が言い渡されます。

この点は、迅速な解決を望む者には歓迎すべきことですが、一方で、事前準備を十分に行わなければ敗訴する恐れが高いとも言えます。
もっとも特別な事情がある場合には、一回の審理で終わらず期日が続行となる場合があります。例えば、重要な証人が病気などで出頭できなくなった場合や、和解の試みなどにより審理の時間が足りなくなったような場合です。

通常の民事訴訟では、提出が認められている証拠について特に制限はありませんが、少額訴訟では、証拠調べはすぐに取り調べることができるものに限られています。
これは、少額訴訟が、前述のように原則として一回の期日で審理を終わらせることを前提としているからです。

証拠としては、出頭している当事者本人、当事者が連れてきた証人、当事者が持参した証書や検証物などを挙げることができます。
最後に、不服申立てについても少額訴訟は大きく異なっています。
通常の民事訴訟では、判決に不服がある者は、上級裁判所に上訴(控訴、上告)することができます。

しかし、少額訴訟は一審限りで、判決に対して控訴することは認められていません。
その代わり、不服がある場合には、判決をした簡易裁判所に異議を申し立てることができる仕組みになっています。
この異議が認められると、手続きは通常の民事訴訟手続きの第一審手続きに移行することになります。

利用回数の制限について

少額訴訟は、利用回数が制限されています。
同一の原告が同一の簡易裁判所に対して行える少額訴訟の申立回数は、年間十回までに限定されています。
年間というのはその年の1月1日から12月31日までのことです。

少額訴訟を提起するときには、その簡易裁判所でその年に少額訴訟を何回提起したかを申告することになります。
嘘の申告をした場合には、¥10万円以下の過料に処せられます。

通常訴訟へ移行することもある

被告には通常訴訟に移行するよう求める申述権もあります。
これにより、被告が少額訴訟に同意しない場合は、通常訴訟に移行することになります。
さらに、少額訴訟で原告の請求が認められた場合には、判決の中で被告に支払い猶予が与えられることもあります。こ

れは、裁判所が、被告の資力やその他の事情を考慮して、3年以内の期限に限って金銭の支払いを猶予したり、その期間内に分割で支払うことを定めるというものです。

定型訴状が用意されている

簡易裁判所には、少額訴訟用の定型訴状用紙があらかじめ用意されています。
これは窓口でもらうことができますので、訴状を作成するにあたって利用してみるとよいでしょう。

定型訴状用紙は、貸し金返還請求、売買代金請求、敷金返還請求、損害賠償請求といった個々の事件内容にしたがい、請求の趣旨、紛争の要点、請求の原因、が記入しやすいようになっています。
少額訴訟の選択をした場合には、訴えを起こす際に、「少額訴訟による審理および判決を求める裁判を求める」旨の申述が必要となりますが、この申述は訴状の中に明記しなければなりません。

定型訴状用紙にはチェック欄がありますので、少額訴訟を起こす場合にはマークを付けます。
訴状中の紛争の要点は、どのようなことが争いとなっており、どのような解決を求めているのかを裁判所に伝えるために記します。
わかりやすく書くことに気をつければよいでしょう。

以上のような必要事項を記入した後は、用紙の左端をホチキスで留めて、裁判所用と被告用に、各に割印(内容の同一性や関連性を示すために二つの文書にまたがって押印すること)を押します。
それで、訴状はできあがりです。
訴状を提出する際には、裁判所へ訴訟費用を納めなければなりません。

請求金額に応じ納める手数料(収入印紙)と相手方の呼び出しに使用する費用、郵便切手、などが必要になります。
訴状の貼用印紙(収入印紙)は、請求する金額に応じて 1000円~6000円の間に収まります。予納郵券(郵便切手)代は裁判所により異なります。
証人を取り調べる場合、その証人が日当などを請求するときは、日当、旅費に相当する額を事前に納付する必要があります。

さらに、少額訴訟では一回の期日で審理を終えるために、給与明細書の写しなどの証拠書類を口頭弁論期日の前に提出しておかなければなりません。